秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「‥‥ラジオつけてもいいですか?」
沈黙を恐れてそうお願いすると、最上さんが右手にハンドルを握ったまま、左手でラジオをつけてくれた。
迷うようにチャンネルをカチカチと回す。
結局、ヒットチャートの特集をしている局のチャンネルで手がとまった。
ラジオから、一昔前に流行ったバンドのバラードが流れる。
懐かしいな、
これ結構好きだったんだっけ。
「今宵さんは普段何聞くの?」
「えっ‥‥。えっと、今流れてるのとかよく聞いてました。」
不意にそう聞かれ、噛みそうになりながら返した。
ん?
よく聞いてた、って答えになってないかも‥。
「へぇ、意外。バンド曲とか聞くんだ」
そう言って、最上さんが言葉通り意外そうな顔をする。
え、そうだろうか。
流行っていてもアイドルの曲だったりはあまり聞かないし、気づけばバンドの邦ロックなんかを聞いている事が多い。
「意外ですか?」
「絶対クラシックかオペラって答えるかと思ったから」
「なんですかそれ。私にどんなイメージ持ってるんですか」
「うーん、藤の花みたいに高貴な感じ」
「それはただの名前です」