秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

さっき今宵さんにあんな事を言われた手前
一方的に少しだけ気まずくて、シュンとする若菜から小さく目を反らした。

玄関のドアを開けてくれた若菜は適当にいつも仕事で履いているヒールを履いて出てきたようで、部屋に戻ろうとその靴を脱ぐと、一気に小さくなったように見える。

元々背が低いのと顔立ちが幼い事を悩んでいるようで、外出するときはいつも高めのヒールを履くし、メイクも大人っぽい。

それでもまだ美少女という言葉が似合うようなあどけなさは残るが、
家でのヒールを脱いでいたりメイクをしていなかったりする若菜が一番素に近いような気がする。




「柊ちゃん?入らないの?」

玄関でぼうっとしていた俺に若菜が振り返り、不思議そうにそう尋ねる。

「ん?あぁ、入るよ」





――秘書さんの事、大切なんですよね?


今宵さんにかけられた言葉。
図星だった。

どこか放っておけない手のかかる幼なじみが昔からずっと気がかりで世話を妬いて。

自分の気持ちに気がついたのはいつ頃だっただろう。

ずっと妹のように思っていたのに。
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