秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
気がつけば、唇から取り返しのつかない言葉がもれていた。
「──‥好きだ」
そう告げた瞬間、
掴んでいた若菜の腕から力が抜けたのがわかった。
若菜が、これ以上ないほど目を丸くする。
大きく目を見開いて─‥
そして、泣き出しそうな顔になった。
苦しそうに眉を歪め、小さく目を反らす。
若菜のこんなに戸惑った、困ったような顔を見たのは初めてだった。
一瞬で後悔した。
勢いで好きだなんて言った事を。
若菜の気持ちなんて全然考えていなかった。
どうして困らせるって気付けなかった?
しかもあんな事の後で。
‥‥そうだ、あんな事の後で、若菜は男である俺に抱きついたり躊躇無く俺の部屋に入った。
無条件に預けられていた信頼。
それを壊したのか、俺は。
「柊ちゃんごめんなさい。
私、柊ちゃんとは‥‥幼なじみでいたい」
そう言う若菜の声は震えていて、その申し訳無さそうな声色が胸をえぐった。
「‥‥‥あぁ、
いきなり変な事言ってごめんな。」
「ううん、そんな風にいってくれてありがとう。あ、謝らないで」
俺ならこんな風に泣かせたりしないって言ったそばから、若菜を困らせてこんな顔をさせたのは俺だ。
叶わないなら、気づくんじゃなかった。
―――若菜を困らせるだけの気持ちなら、
もう封印しようと思った。