秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
◇
───‥ちゃん。
───‥柊ちゃん。
「柊ちゃん起きてーー!」
「うわ‥‥‥何?」
若菜からそう耳元で叫ばれて目が覚めた。
‥‥すげー響いたんだけど。
重たい瞼をこすって、
ゆっくりと体を起こす。
おたまを持ったままの若菜が、怒ったように小さく頬を膨らませていた。
「何?じゃないよ。柊ちゃん全然起きないんだから」
「あー、ごめん」
可愛いな、なんて思って思って思わず頬をほころばす。
「そういえば若菜、髪延びたな」
「えっ‥‥?」
‥懐かしい夢を見ていた。
すっごい昔の。
高校時代の、しかもあの日の。
あまりに懐かしくて不思議な気分になる。
「柊ちゃんもしかしてまだ寝ぼけてる?」
「いや‥‥」
少しだけ怖くなった。
俺、あの頃から何か変わったか‥?
こんな気持ちは封印するんじゃなかったのか。
それなのに、馬鹿みたいに若菜を好きなまま大人になった。
他の女じゃ駄目だった。
かといって、もうあれ以来若菜に想いを告げる事は無かった。
今に甘えていた。
結局俺はずっと何がしたかったんだろう。
‥‥本当に馬鹿みたいだと思った。