秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。











───‥ちゃん。



───‥柊ちゃん。





「柊ちゃん起きてーー!」




「うわ‥‥‥何?」



若菜からそう耳元で叫ばれて目が覚めた。
‥‥すげー響いたんだけど。


重たい瞼をこすって、
ゆっくりと体を起こす。

おたまを持ったままの若菜が、怒ったように小さく頬を膨らませていた。

「何?じゃないよ。柊ちゃん全然起きないんだから」

「あー、ごめん」


可愛いな、なんて思って思って思わず頬をほころばす。


「そういえば若菜、髪延びたな」

「えっ‥‥?」




‥懐かしい夢を見ていた。

すっごい昔の。
高校時代の、しかもあの日の。

あまりに懐かしくて不思議な気分になる。


「柊ちゃんもしかしてまだ寝ぼけてる?」

「いや‥‥」


少しだけ怖くなった。
俺、あの頃から何か変わったか‥?

こんな気持ちは封印するんじゃなかったのか。

それなのに、馬鹿みたいに若菜を好きなまま大人になった。
他の女じゃ駄目だった。

かといって、もうあれ以来若菜に想いを告げる事は無かった。


今に甘えていた。

結局俺はずっと何がしたかったんだろう。


‥‥本当に馬鹿みたいだと思った。

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