秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

「黒川、人の話聞いてたの?だからどっちが似合うかどうかじゃなくて‥」

「いいじゃないですか。デートへ行くのにお洒落して気合いを入れるのは、全然変な事じゃありませんよ?」

そう言って黒川がニコっと微笑んだ。

デートという単語に反応して、カァっと顔が熱くなる。

デートなんかじゃないのに。

でも事情も知らない黒川が、私が婚約者と一緒に出かけるのをデートと考えない方が不自然といえば不自然だ。

ここで否定するとややこしい事になる、なんて思った所でハッとした。

「‥なんで私が今日最上さんと出かけるって知ってるの」

無意識に責めるようになった口調で黒川に問い詰める。

「今宵様の様子を見ていたら、そうかなぁって何となく。こんなに服装で悩まれている今宵様を見るのも初めてですし」

「なっ‥べ、別にそんなに迷ってない!」

「そんなに照れられなくても」

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