秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
自分がすごく自意識過剰なのは自覚しているけど、
最上さんがそんな事思うはずないって事くらい分かってるけど、
それでもなんだか最上さんに会うためにめかしこんでいるような自分が嫌だった。
‥これから最上さんに会うのは、両親をだまして、最上さんとの婚約話を壊す為だ。
両親にも会社にも申し訳ないけど、
もう誰とも結婚とか交際とか、私には出来る気がしない。
そんな事を考えながら、巻くはずだった髪を櫛で軽くすいてから、コートを羽織って家を出た。
◇
「あらぁ最上君、わざわざ家の前まで迎えに来てくれてありがとう!今宵をよろしくお願いしますね」
「いやぁそれにしても最上君はいつ見ても男前だなぁ。今宵にはもったいないぞ~」
「いえそんな‥」
「謙遜することはないだろう。いやぁ、最上君のような男になら今宵を安心して任せられるよ」
「も、もういいでしょ。行ってきます」
いたたまれなくなって、少し困ったような顔で両親に微笑む最上さんの腕をとり─‥
というか掴み、傘をさしてから家を出た。