秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「すみません、うちの両親うるさくて‥」
「全然。明るくて素敵だと思うよ」
ちょっと照れるけどね、と小さく笑いながら付け足して、最上さんが車の助手席のドアを開ける。
そして、私が差していた傘をパッと取られた。
「今宵さん、乗って」
「ありがとうございます」
私が車に乗り込む間も雨に濡れないように傘を差してくれて、乗り終わるとパタンとドアを閉めてくれた。
車に乗るとき、黒川もいつもこうしてドアを開けたり閉めたりしてくれる。
私にとっての当たり前が、世間と少しずれていることは自覚している。
最上さんは私の執事じゃないんだし、
ドアくらい自分で開け閉めしないと‥。
そんな事を考えているうちに、最上さんが運転席に乗り車が走り出した。
最上さんの車に乗せてもらうのはこれで二度目だ。
手をきゅっと握りしめて、
拭いきれない緊張を隠す。