秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

「今宵さん、舞台とか好き?」

「舞台?好きですけど‥。舞台とかミュージカルとか、小さな頃からよく連れていってもらってて。
今でもよく行きます。」

そう答えると、最上さんがほっとしたような顔になって微笑んだ。

「よかった。仕事の延長で申し訳ないんだけど、見ておきたい舞台があって。一緒に付き合ってもらってもいい?」

「も、もちろんです」

よかった‥と内心で胸を撫で下ろした。
舞台を見るのは好きだ。

それになにより‥舞台を見ている間はもちろん喋る必要がないから、間が持つ。

「でも今宵さんが舞台好きとか意外だなぁ」

「またそれですか。‥‥よく言われますけど」

そういうと、最上さんがハハッと声を上げて笑った。
そのタイミングで前の信号が赤に変わり、車にゆっくりとブレーキがかかる。
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