秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「なんですか。私が演劇を愛せないサイコパスにでも見えるんですか」
そういいながら無意識のうちに口が尖る。
すると、信号が赤だからか
最上さんが前に向けていた視線を私に移した。
車に乗ってから初めて最上さんと目が合い、
動揺しそうになるのを瞬時に堪える。
「ごめんごめん。そういう訳じゃなくて、単純に意外だなって思っただけだよ」
「べ、別に‥っ、否定して下さらなくていいです」
「本当だよ。サイコパスなんて思えないし」
最上さんがそう答えると同時に車が発進する。
「‥‥どうして思えないんですか。私、言われ慣れてるから別に今更気にしません。」
窓ガラスに打ち付ける雨の音にかきけされる位にわざと小さな声で発した言葉は、しっかりと最上さんの耳に届いていた。
「そもそも俺にこんな提案する時点で、今宵さんは人の気持ちに敏感で優しい人だと思うんだけど」
優しい人─‥。
今まで言われた事のなかった言葉に、かぁっと顔が赤くなった。
よかった。
今、信号が赤じゃなくて良かった。
こんな顔を最上さんに見られたら、きっと消えてしまいたくなる。