秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
小説ばかりが並んでいた私の本棚も、いつしか料理本ばかりが占領するようになったのもそのせいだ。
「なんか、俺甘えてばっかだよな。たまには俺が作るよ、とか言えたらいいんだけどさ‥」
そういって柊ちゃんが困ったように頭を掻いた。
柊ちゃんは、料理が大の苦手なのだ。
「柊ちゃん、人には向き不向きがあるからさ。
大丈夫、気にしなくていいよ」
「俺何も言ってないのにフォローされてる」
そういって柊ちゃんがハハっと笑った。
私もつられて笑う。
‥‥本当は私だって甘えてばっかりだ。
行きたい所に連れていって貰ったり、
悩みができたら相談して貰ったり、
小さな頃から、ずっとずっと、
守られてきた。
柊ちゃんが私に甘えてばかりだと言うのなら、
それはお互いさまだ。
「柊ちゃん」
「どうした?‥っていうか、何かのおねだりだろ」
そう言って柊ちゃんがニヤりとする。
図星だったら、
思わず下げかけていた頭をパッと上げた。
「どうしてわかったの?」
「声でわかるんだよ、声で」
柊ちゃんが得意げにそう言う。
こ、声で‥‥?
私、わかりやすいのかな。
「で、どうした?」
「え‥?あっ、そうだ、行きたい所があって」