秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
そんな事は、口が裂けても言える筈が無い。
切なさで一杯になりそうな気持ちを振り切るように口を開いた。
「こういうのも‥誰にも気を遣わないでお喋りできるからいいよね」
「そうだな。普通の投影だったら若菜途中で眠り出すだろうし」
「な、なにそれ。眠ったりなんかしないよ」
語尾が力なく下がっていくのが、我ながら情けない。
でも多分─‥もし眠っちゃったりしてたとしたら、
きっと後悔するんだろうな。
これから、"最上社長"ではなく、"柊ちゃん"と一緒にいられる時間はぐっと少なる筈だから。
そんな事を考えて、
やっぱり何も言葉を発っさなかったら泣き出してしまいそうで、何か話そうとして、ずっとずっと呑み込んでいた言葉が口をついた。
「柊ちゃん、
私‥‥もう少ししたら家を出るね」
自分でも驚くくらいに、不思議と落ち着いた声だった。
どれくらい、
二人の間に沈黙が流れたんだろう。
柊ちゃんからの返事は無い。