秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

こんなに頑張ったのに。
ガックリと肩を落として、もう引き返そうと思った時だった。

一瞬自分の目を疑った。

道の向こうからどこか落ち込んだような顔をしてこちらへ歩いてきているのは…
間違いない、九条さんだ。

慌ててまだハンドルを握っている黒川の肩を揺さぶる。

「間違ってなかった！黒川、あの女の人の前で車とめて」

「はい」

黒川がそう返事をすると同時に車が動きだし、やがてぽかーんとした顔をしている九条さんの前で停まる。

窓を開け、九条さんの方に顔を出した。
私の顔を見ると、九条さんがさらに驚いたように目を丸くした。

…よかった、覚えて貰えていたみたい。

これで九条さんが私の事を覚えていなかったら色々と厄介だ。