秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

「九条さん、乗って…!」

「ええっ」


そう言って、戸惑う九条さんを半ば強引にクルマに乗せた。
九条さんが乗り込むなりまた車は走りだす。

「今宵さん、これは一体どういう…?」

九条さんが怖がるように窓の外を見つめた後にそう尋ねる。
…うん。いくらなんでもこれは強引過ぎたと自分でも思う。

怯えられても仕方ない。
罪悪感にかられながら、用意しておいた台詞を返した。

「いきなり誘拐紛いな事してごめんなさい。
最上社長に渡して貰いたいものがあるの」

「最上社長に?」

きょとんとする九条さんに、中に箱の入った
片手で持てる程の紙袋を渡した。

私の差し出した紙袋を、
九条さんが丁寧に両手で受け取る。

実はこれ、車のダッシュボードに積んであったモノを勝手に差し出している訳で、正直私も箱の中身はわからない。
完全に九条さんを最上さんに会わせる為の下手な口実だ。
お菓子か何かだとは思うけど…。
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