秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

「これ、私と最上さんにとってすごく大事な物なの。手紙も入ってて、今日中…というか一刻も早く最上さんに受け取って貰う必要があるの。
でも私、これから大事な会食があって渡しにいけないから、代わりにお願いしたくて」

うわぁ、
すごく大事なものとか他に言い方!
口から出まかせの設定の薄さに
ほぞを噛む。

子供に言ってるんじゃないし、
さすがにキツかったかと思ったが、九条さんの目に疑念の色が浮かぶ事はなく見事に騙されてくれた。

「そんなに大事な物なんですね…。わかりました、私が最上社長にお渡しします。今すぐ最上社長に連絡して居場所をききますね」

そう言って携帯電話を取り出そうとした九条さんの手を慌てて制す。

「だ、大丈夫だから!居場所なら分かってて何なら今からそこ向かってるから」

「え…ご存知なんですか?」

「そうよ」

動揺を隠すように敢えて事務的に返す。

「東京湾よ」

「東京湾!?」

「あ…東京湾の船よ」

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