秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

そんな黒川の言葉に、
はぁっと肩の力が抜けた。

何よ、疑ってたんなら最初からそう言いなさいよと内心で悪態をつきつつ、
そこで何も踏み込んでこないのが黒川だという事はわかってる。

黒川より勘のいい男を私は他に知らない。

きっと偽装恋愛しているうちに私が本気になった事くらい気づいている筈なのに、
敢えて何も言わない黒川のその気遣いが何処か悔しかった。

「私の事、
馬鹿だって思ってるでしょう」

「そうですね」


きっと否定してくれると思って投げた言葉をあまりにあっさり肯定され、
拍子抜けして俯いていた顔を上げる。

すると、ルームミラーに映る黒川の綺麗な目が優しく微笑むのが見えた。

「敵に塩を送るような真似をして、自分の事はどこまでも後回し。本当にお人好しで…」

「ちょっと」

「でも、今宵様のそういうお優しい所が私は好きです」

「……っ」

優しい、って…。

黒川の思わぬ切り返しに、
首までカァっと赤くなる。

照れた顔をミラー越しで見られないように、
俯くようにして顔を反らした。


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