秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
クリスマスクルーズ 柊side
「やっぱり連絡つかないな…」
半ば諦めながらも掛けた今宵さんへの電話は繋がる事はなく、
柊のスマホのスピーカーからは無機質な電子音が流れるだけだ。
クリスマスのワンナイトクルーズ。
藤乃今宵の名前でそんなチケットとリーフレットが送られてきたのはほんの数日前だ。
予約されている部屋は、
シングルではなくツイン。
それもスイートルームだと分かり更に戸惑った。
でもいくらこれが俺の傷心旅行って事だとしても、こういう提案を今宵さんがするとは思えない。
好きな人のいる身で、
いやそうでなくとも今宵さんは付き合ってもいない男とスイートルームで一泊するような人じゃない。
恐らく今宵さんのご両親が気を利かせてくれた…とかそんな所だろうか。
そうだとしたらきっと今宵さんは驚く筈で。
でも連絡が取れない以上ここに来ない訳にも行かなかった。