秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
失ってから初めて気がつく。
前より静かになった毎日。
若菜の居なくなった部屋の広さも。
無理矢理にでもその手を掴んでいたら。
幼馴染の壁を叩き壊していたら。
───会社に行けば、
俺達は社長と秘書だ。
「………。」
腰掛けていただけだったが、
そのままドサっとソファに横になる。
残っていた仕事を片付けようかと思っていたが、もうこのまま眠ってしまおうかと腕を額に当てて目を閉じた時だった。
部屋に置いてある電話のベルが響いた。
え….。
こういう電話って掛かってきたりもするんだな、と思いながら重たい腰を上げて受話器を取った。
「フロントからお電話させて頂いておりますが、207室の最上柊様でお間違いないないでしょうか?」
「はい」
「お連れ様がお待ちになっておられますので、一階のフロント近くまでいらしていただいてもよろしいですか?」
「あ…すぐ行きます」
そう言って電話を切る。
受話器を置いてから、
一旦停止した頭で考える。
…お連れ様?