秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。





まさか今宵さんが来たのか?

そう思いながらフロントのある一階に降り、
──目を疑った。

ゆるく巻かれたくり色の髪。
ヒールを履いていても少し低めな身長。
どこか不安そうにキョロキョロとしていた瞳が、俺を見つけてふわっと微笑む。


「柊ちゃん!」


そう名前をよんで駆け寄ってくる若菜。

「若菜…え、何で…?」

「これ、
今宵さんに頼まれて届けに来たんだよ」

状況を呑み込めないままの俺に、
若菜がそう言って紙袋を差し出した。

今宵さんに頼まれたって、
どういう事だ…?

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