秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

船は小さく振動して動き出す。

「どうしよう、私…」

「落ち着け。今宵さんに、出航は2時間後だって言われたのか?」

「うん…」

若菜がそう頷いた後に不安そうに小さな声で多分、と付け足した。

こんな事って…。


「若菜。これに乗る為に何か預かっただろ?
それ貸して」

「乗船券の事?」

「そう」

若菜がコートのポケットから取り出した封筒を受け取って中身を確認する。

…やっぱり。

中に入っていたのは、
乗船券と小さなリーフレットと、そして俺が持っているのと同じ部屋のルームキーのカードだった。

ルームキーが入っているとは知らなかったのか、若菜がそれを見て驚いたように小さく声を上げる。
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