秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「あ‥砂糖、もっと入れてきますね」
まだ苦かったかも‥。
そう思って慌てて砂糖を取りに行こうとすると、右腕をつかまれて制された。
「いや、いい」
「でも‥」
すると、最上社長がバツが悪そうな顔をして目を反らした。
「大の社長がコーヒーの一杯も飲めないなんてかっこ悪いだろ」
そう言って、
最上社長はもう一口コーヒーを飲んだ。
なんだか拗ねたような表情が可愛くて、つい小さく吹き出してしまう。
「‥‥何笑ってんだ若菜」
─若菜。
苗字ではなく名前を呼ばれ、ふっと肩の力が抜けた気がした。
お仕事の時間は終わったという、私達の間での合図だ。