秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

そう言って、柊ちゃんが怪しむように目を細める。

ど‥どうしよう、こういうのって、どうやって切り出せばいいの?


「そういえば光一さんに預かってもらってた忘れ物って、何?」

「へっ?」


不意にそんな質問をされてすっとんきょんな声を出してしまった。

そっか、そういう設定だったんだっけ。

「社員証です」

瞬時に頭を回転させて、不自然のないような回答を返した。



「へぇ、いつの間にか嘘が上手くなったな」

「‥‥‥‥!」



何もかも見透かすような目でそう低く呟かれ、心臓が嫌な音を立てて跳ねた。

ば、ばれている。

やっぱり柊ちゃんには何もかもお見通しだ。

嘘なんてつけないな。そう心の中でクスっと笑って、背中に隠していたお見合い写真をちゃんと胸の前に持った。

ふふっと心の中でクスリとして、ぽかんとしている柊ちゃんの顔を見る。

なんだか謎に緊張してしまい、ふーっと小さく息を吐き、笑顔を作った。

「嘘ついてごめんなさい。本当は、これを預かってきたんです」

そう言って持っていたお見合い写真を差し出すと、柊ちゃんが凍りついたように目を見張った。

あ‥‥れ、びっくりさせちゃったかな。
それとも、嘘ついちゃった事を怒ってる‥?

柊ちゃんは、写真を見下ろして固まったまま、それを受け取ってはくれない。

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