秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

調子狂うなぁなんて思いながらも続ける。

気づけば自然と口調は敬語に戻っていた。


「藤乃今宵さん。
アーネスト・デイミュージック株式会社のご令嬢さんなんだそうです」

「へぇ、大手のレコード会社だな。そこと提携する事でうちのプロダクションはもっと大きくなるって話か。」

そう言って柊ちゃんが、何が可笑しいのか、小さくハハっと笑いながらドカっとソファに腰かけた。

「九条も座って」

「‥‥はい」


柊ちゃんがそう言ってソファの隣を目で指す。

なんだか柊ちゃんの様子がおかしいな、なんて思いつつ、柊ちゃんの隣に腰かける。

すると、柊ちゃんが首を少し私の方へまわして、至近距離で見つめあうかのように目が合った。

いつもとは違うその距離と、
いつもより近い所で柊ちゃんの声が響く。

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