秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
スッと背後から手がのびてきて、その手は私のお目当ての資料を捉えた。
「─どうぞ」
耳元でそんな聞いた事のない声が響く。
あ‥‥れ、足音に全く気がつかなかったな。
「助かります、ありがとうございます」
そう少し驚きつつ、お礼を言おうと振り向く。
資料を取ってくれたのは、初めてみる30代後半位の男性だった。
少し長めの髪もきちんとセットされていて、清潔感があるな‥という印象。
そして見上げる程の高身長。
ただ、その距離の近さに戸惑ってしまった。
さっきは私の頭の上にある資料を背後から取ってくれていたのだから、不可抗力で密着してしまうのはしょうがない。
実際椅子でももってこないと、私には身長が足りない位置に資料はあったし助かった。
ただ‥‥。
「あ、あの‥‥。」
「何か?」
「何か、って‥‥。」