秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
とっさのことで、なんて言って離れてもらえばいいのか分からなくなる。
心なしか、男性との距離をもっと詰められた気がした。
思わず後ろに退くと、背後に本棚が当たった。
後ろは本棚。
──‥この、状況って‥‥?
目の前で薄ら笑いを浮かべる男性が怖くて、血の気が引いて頭が真っ白になった。
男性が膝を曲げ、私と目線を合わせる。
至近距離で目が合い、男性の瞳が不気味に弧を描いた。
「は、離れてください‥‥っ」
そう叫んで男性から逃げ出そうとするけれど、右腕を捕まれて逃げられなくなった。
男性は、空いた左手で私の顔の横に手をつき─‥完全に閉じ込められた。
逃げ出そうと懸命にもがくけれども、私の右腕を掴む彼の手がそれを許さない。
「離して‥‥!」
捕まれているのは片手だけなのに、こんなにも敵わない。
そんなことに気がついて、目の前が真っ暗になった。