秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「そうやって嫌がられると堪らないな」
「‥‥‥‥!?」
「怯えた顔も、可愛いよ‥」
熱のこもった声でそう囁かれ、声にならない声が漏れた。
逃げ出そうとしても、もっと腕を強く捕まれるだけだった。
どうしようどうしようどうしよう‥。
さっきとは比べ物にならないほど顔を近づけられ、ガッと思い切り俯いた。
すると‥‥相手を怒らせた。
顔を見ていなくても、なんとなく雰囲気で悟った。
「そんな嫌がるなよ。俺だって傷つくよ」
耳元でそう囁かれ、全身に鳥肌がたったのがわかった。
ど‥‥しよ。
怖くて、まるで芯が抜けてしまったかのように、体に力が入らない‥‥。
「な‥‥でも私達、会ったこともないじゃないですか‥‥っ」
「──そうだね。でも俺はずっと見てた。
ウチの会社の秘書は西野明日香と九条颯人の娘って噂を聞いて気になったのが始まりだった‥。一体どこぞのコネ女かと思ったよ、最初はね‥」
「え‥‥‥っ」
いきなりボソボソと何を喋られたのかと思えば、いきなり肩を捕まれ、強く押された。あっけなく床に叩きつけられる。
チャンスだ、と思った。
自分でも信じられない位の俊敏さで立ち上がろうとしたが‥‥いきなり視界が反転し、気づいたら床の上でそのまま覆い被されていた。
──‥‥押し倒されている。