秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「お前、俺の秘書に何した?」
「あ‥‥あ‥‥俺は‥‥その‥‥っ」
「──何したって聞いてんだよ!」
柊ちゃんが、ビクッと身がすくむくらい大きな声でそう怒鳴り、狼狽える男を見る目を蔑むように細めた。
「‥‥若菜、目閉じてて」
「えっ‥‥うん」
コクンと頷いて目を閉じると、
─瞬間、鈍い音が部屋に響いた。
思わず閉じていた目をさらにきつく瞑る。
恐る恐る目を開けると、男が床に叩きつけられていた男が脇腹を押さえながら悶えていた。
「‥‥‥‥っ」
見ていられなくて、思わず顔を反らす。
すると、頭上から柊ちゃんのいつもよりずっと低い声がかかった。
「若菜、警察行くぞ」
「柊ちゃん、そこまでは大丈夫。その‥‥み、未遂だから」
「でも‥」
「お願い。本当に、大丈夫だから」
未遂だし、警察に行っても何も解決できないかもしれないし、話をきいてもらえるかどうかも、無知な私には分からない。
それに─‥警察につきだしたら、この人の人生は一変してしまうだろう。
私がもっとちゃんとしていれば、強かったら、きちんと逃げ切る事だって出来たはずだ。
柊ちゃんはまだ納得がいかないというように眉をひそめたけれど、私の目をみて何を言っても無駄だと思ったのか、小さく息をはいて頷いた。
「─分かった。ただもう、若菜と同じ会社では働かせない。」
「‥‥うん」