秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
そう頷くと、柊ちゃんがスーツのジャケットを脱ぎ、それを私にバサっと優しく被せた。
え?と思って自分を見下ろすと、スーツのシャツが乱れてはだけていることに気がつく。
「‥‥‥‥っ」
たまらなくなって、自分をすっぽりと包み込むサイズの柊ちゃんのジャケットをぎゅっと掴んだ。
柊ちゃんの匂いに包まれて、速かった鼓動が落ちついてくるのがわかる。
それでもカタカタ震えてしまう私を見て、柊ちゃんが顔を歪めたのが分かった。
柊ちゃんが、ポケットからケータイを取り出し、素早く操作をした後にそれを耳に当てる。
「急にすみません、今すぐ第三資料室に来られます?」
柊ちゃんが電話越しの誰かにざっくりと事情を説明した後、男を睨み付けてから電話を切った。
すっかり顔面蒼白した男がすくみ上がる。
同一人物とは思えない豹変ぶりに、複雑な気持ちになった。
「‥‥若菜、立てるか?」
「うん」
差し出された柊ちゃんの手に甘えて立ち上がる。思わずその胸の中に飛び込んでしまいそうになるのを、唇を噛んでこらえた。