秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。


「とりあえずここ出ようか。後は任せてあるから。」

「‥‥うん」

任された人に申し訳なさを感じつつ、そのまま柊ちゃんに腕をひかれるまま部屋を後にし、社長室へ向かった。






部屋に入り、大きなソファにカタンと力が抜けたように座り込む。
いつものように柊ちゃんも隣に腰かけた。

手を伸ばせばすぐの距離に柊ちゃんがいることにどうしようもなく安心して、気づけばポロポロと涙が溢れてきた。

そんな私を見て柊ちゃんが固まる。

心配させたくないのに─‥まるで蛇口のように涙がとまらなくて、自分ではどうしようもできない。

「‥‥若菜‥」


柊ちゃんがそう私の名前を呟いて─‥
私の肩に手を伸ばしたのが分かった。

だが、その手は私に触れる事を躊躇するかのように止まる。


わかってる。あんな事があった後で、きっと柊ちゃんは私に触る事を躊躇してる。

気を遣ってくれてる。

だって今日、修ちゃんは私の頭を撫でない。

私が泣くと昔から決まってそうしてくれるのに。

柊ちゃんに触られるのが嫌な訳がないのに。

そんなことであんな男の事は思い出さない。

むしろ─‥

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