秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「えっと‥‥その、どうして資料室に来てくれたの?」
動揺を隠した声でそう尋ねる。
柊ちゃんが来てくれなかったら本当に危なかった。でも、どうして駆けつけてくれたんだろう‥?
ずっと気になっていた事ではあった。
抱き締められた状態のまま、柊ちゃんが囁くように答える。
「‥資料室が埃っぽいって思い出したから。若菜、喘息持ちだろ」
そうだったんだ。
それで、心配して来てくれたんだ。
それがなんだか嬉しくて、思わず頬が緩む。
「柊ちゃんあのね、私今、生まれて初めて喘息持っててよかったって思ったよ」
「なんだそれ」
柊ちゃんがハハっと小さく声をあげて笑う。
そして、抱き締められているからお互いに顔は見えないけれど私達は微笑み合った。
「ごめんね。
‥こういうの、今日で最後にするから」
「え?」
そう言って、
柊ちゃんのシャツをきゅっと掴む。
──私、柊ちゃんに甘えすぎてる。
これからは、強くならなきゃ。
私も、もう子供じゃない。
危ない所を助けてもらって、
こんな風に抱き締めてもらって、
頭を撫でてもらって、安心させてくれて。
でもそれはもう、私が柊ちゃんに甘えていい事じゃない。