秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「もしもし海斗さん!申し訳ありません、午前中の仕事が長引いていて、最上社長も向かえそうになくて‥。
すみません、とりあえず用意した資料だけでも持って伺ってよろしいですか?」
『すみません、助かります』
◇
エトワールへはタクシーを使って向かった。さすが‥というか、aria etoile 劇場は久しぶりに来てみたけどやっぱり大きい。
タクシーを降りエントランスへ向かおう
とすると、受付の側に海斗さんが立っていた。
ちょうど劇場から出てくるお客さん達がちらっと海斗さんを見ていくのが分かる。
スラッと高い身長に整った顔立ち。
少し近寄りがたい雰囲気はあるけれど、人の視線を無自覚に惹き付ける。
思ったよりも多くなってしまった資料を腕一杯に抱えている私も、ある意味で注目を集めている気がした。
ど、どうしよう。
恥ずかしいし、あんなに女の人達からの視線を集めている海斗さんに声かけづらい‥。
「‥‥‥‥。」
そうやって声をかけるのを躊躇って俯いていると、ちょうどちょうど横を通りすぎた女性二人組の会話が耳に入った。
「あの人俳優さんかな、かっこいい~!」
「そうね‥でも見たことないよ?」
そうだ、私も最初は役者さんかなぁって勘違いしたんだっけ。そんな事を思い出してクスっとする。