秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。


「いえ、嬉しいです。でも最上社長の社長室の方がずっと素敵だと思いますけど」

「え、そうですか?でも柊ちゃんはあんまりセンスがよくな‥‥」

そこまで言って、思わず口を手でふさぎそうになった。
そんな事をしたらかえって怪しいと気づき、ふさぎそうになった手をひっこめる。

海斗さんの涼しげな目元が、驚いたように少しだけ見開いた。


わ、私の馬鹿‥!


つい口がすべって、"最上社長"じゃなくて、"柊ちゃん"って呼んでしまった‥‥。


「──最上社長はあまりセンスがよろしくありませんのでそんなことはないです」

「いえ‥‥少なくとも俺よりは。
それに、憧れます。男の俺から見てもかっこいいですから」

「――それ聞いたら、
きっと最上社長も大喜びです」

動揺を隠しきれず真っ赤な顔で答える。

突っ込まない大人の余裕に助けられたが、これはこれで逆に恥ずかしい‥。


よく考えたら、海斗さんは成宮さんの息子さんだし、私達が幼なじみってこともご存知で察してくれたのかもしれないけれど‥。

それでも、オンとオフの切り替えが出来ていなかった私は秘書失格だ。

柊ちゃんの秘書になったとき、二人で約束したのに。

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