秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
思わずシュンとする私に、海斗さんが声を掛けてくれた。
「よかったら、今から一緒に劇場をみてまわりませんか?」
「へっ?」
「ちょうどお客さんも退場された頃だと思うんですけど‥忙しいですか?」
「忙しくないです、行きます‥!」
劇場の中に入るのは、小さい頃に成宮さんに柊ちゃんと一緒に連れていってもらった以来だ。
実際に会場をみておいた方が打ち合わせもイメージが沸いてやりやすいだろう。
どちらにせよ、二人だけだと打ち合わせを進める事も難しい。
打ち合わせは四人揃ってまた日を改めてからということになり、
その後軽く資料の説明をしてから海斗さんに劇場の中へつれて行ってもらった。
お客さんの入っていない劇場はガランとしていて、思い出の中のそれよりずっと広く感じて目を丸くする。
「わぁ‥やっぱりすっごく広いですね!」
大規模な舞台。
天井も、一般的な劇場よりもずっと高く感じる。
もっと奥へ進もうとすると、
足を客船の段差にひっかけてしまい、こけてしまいそうになった。
海斗さんに右腕を捕まれて支えられる。
「大丈夫ですか?」
「す、すみません‥!」
恥ずかしさで自分の顔が真っ赤になるのがわかった。
うぅ、なんだか、海斗さんに醜態をさらし続けている気が‥。
「すみません、閉場後は客席のライトをほとんど落としているので‥」
そう言って海斗さんが私の右腕を離す。
情けなくて思わず俯いていると、海斗さんから意地悪な表情で顔を覗き込まれた。
「不安なら、手でも繋いで歩きます?」
「え‥、えっ!?」
「冗談です」
そう言ってクスっとされた。