秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

柊ちゃんが上着を脱いで、わしゃわしゃっと髪を拭きながら片手でリモコンを操作しテレビをつけ、チャンネルを少しいじった後に止めた。

「若菜、颯人さん出てるぞ」

「‥‥え」

そう言われてテレビに目を移すと、画面の中で私のお父さんがアップで映っていた。
あ‥‥そういえば今日のこの時間って、お父さんのドラマがやってるんだったっけ。

お父さんのドラマ─‥というのは、
私がそのドラマの主演俳優、九条颯人の娘だからである。

お父さんは娘の私からみてもかっこよくて人気があり、若い頃はイケメン俳優として通っていたらしい。今ではすっかりダンディーになっちゃって、実力派二枚目俳優の名を欲しいままにしている。

そんな人を父に持つだけでも大変なのに、私の母も、西野明日香という元女優さん。
元、というのは、お父さんとの結婚を機にお母さんは芸能界を引退したからだ。

そして、二人ともaria芸能プロダクションに所属しており、そういう訳で、私も小さな頃からこの会社に両親に連れられ出入りしていた。そして、ここの会社の跡取り息子であった柊ちゃんと出会って仲良くなったのが柊ちゃんとの始まりだった。
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