秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
無表情にそう呟いた柊ちゃんは、
またハンドルを握り直して私の方を見る。
「それより、どこか行きたいとこある?」
「‥‥‥‥。」
もし、さっきの電話が無かったら、二つ返事でわんた君ランドと答えていただろう。
わんた君というのは、最近私がはまっている犬のキャラクターで、わんた君ランドというのはその専門店だ。
でも‥‥。
「‥お家に帰りたい」
私の返事に、柊ちゃんが驚いたように目を見張った。
‥‥自分でもびっくりするほど、情けなくて小さな声だった。
「え、家って‥でも飯は?」
「ご飯は、‥‥柊ちゃんとお家で食べたい」
「悪い。外食のつもりだったから、ケーキとか用意できてないぞ」
「コンビニで買うからいいよ」
「‥‥‥‥。」
柊ちゃんが戸惑っているのが分かった。
─柊ちゃんが欲しかった返事じゃない事くらい分かってる。
なんか今の私、すごく我が儘だ。
柊ちゃんのこと困らせて。
「分かった、いいよ。」
「え、いいの?」
「誕生日だろ、若菜の好きなようにしていいに決まってるだろ。
ただし誕生日にコンビニケーキは無しな。俺が嫌だ。」