秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

無表情にそう呟いた柊ちゃんは、
またハンドルを握り直して私の方を見る。

「それより、どこか行きたいとこある?」

「‥‥‥‥。」


もし、さっきの電話が無かったら、二つ返事でわんた君ランドと答えていただろう。

わんた君というのは、最近私がはまっている犬のキャラクターで、わんた君ランドというのはその専門店だ。


でも‥‥。

「‥お家に帰りたい」

私の返事に、柊ちゃんが驚いたように目を見張った。

‥‥自分でもびっくりするほど、情けなくて小さな声だった。

「え、家って‥でも飯は?」

「ご飯は、‥‥柊ちゃんとお家で食べたい」

「悪い。外食のつもりだったから、ケーキとか用意できてないぞ」

「コンビニで買うからいいよ」

「‥‥‥‥。」

柊ちゃんが戸惑っているのが分かった。

─柊ちゃんが欲しかった返事じゃない事くらい分かってる。

なんか今の私、すごく我が儘だ。
柊ちゃんのこと困らせて。

「分かった、いいよ。」

「え、いいの?」

「誕生日だろ、若菜の好きなようにしていいに決まってるだろ。
ただし誕生日にコンビニケーキは無しな。俺が嫌だ。」
< 80 / 276 >

この作品をシェア

pagetop