秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「へぇ‥これ、恋愛物?」
視線はテレビに移したままで柊ちゃんがそう尋ねる。
「うん、不倫物だって言ってた‥‥かな」
お父さんの職業は理解しているつもりだし、幼い頃から慣れてもいる。
テレビに映るお父さんは私の知ってるお父さんじゃなくて、もう知らない人。 それを少し淋しいなって思うのにも、もう慣れた。それでも、やっぱり親の出てる恋愛物のドラマを見るのはなんだか複雑で、まだ慣れない。
ちょうどテレビに際どいシーンが映り、思わず目を反らすと、柊ちゃんがリモコンをとってチャンネルを切り替えた。
さっきまでの雰囲気とは打って変わって、テレビから愉快な関西弁が流れ出す。
「ごめん、俺こっちの方が見たいかも」
いきなりの柊ちゃんの行動にポカーンとして‥気づいた。
「わ、私も‥!こ、こっちの方がみたい」
─柊ちゃんはいつもこういう事をサラッとやっちゃうからずるい。