秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

二人が廊下から去ったのを確認し、時間をおくように少しだけ留まったあとに部屋に帰った。

部屋に戻ると、
もうお父さんとお母さんは着席していて、私に気がついた黒川がジャケットを羽織る手を止め小さく頭を下げた。


「今宵様、それじゃあ私はこれで。時間になったらまたお迎えに上がります。」

「うん」

いつもより無意識につっけんどんにそう返してしまった。

そんな私に、黒川が優しく微笑んだ。


「緊張されなくてもきっと大丈夫ですよ」

「‥‥‥‥‥。」

違うの。緊張してるとかじゃなくて。
ただ、
申し訳なくて帰りたくなっただけだ。

‥大丈夫、上手くやる。

こんな人の人生を左右するような事で、
悪者にはなりたくない。


「今宵様。」

「何?」

「いくらお見合い結婚とは言っても、最終的な所の判断は今宵様の意志です。ですから、あんまり気負われないで下さい」

私にしか聞こえないような声で黒川が真顔でそう呟く。

ハッとして顔をあげたときには、黒川はお母さんとお父さんに頭を下げ、部屋を出ていった。



――最終的な所の判断は私の意志‥か。
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