秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「‥‥‥。」
いろいろな事をぐるぐる考えこんでいるうちに、相手方も部屋に入ってこられた。
最上社長は早くもご両親を亡くされているらしく、最上社長の叔父とさっき廊下でみた女性が同席されていた。
ふと視線をあげ、最上社長とバチっと目が合う。
最上社長は柔らかに小さく微笑んでくれたが、思わず視線を反らした。
‥‥‥‥何やってるんだ私。
心の中で思わずため息をつく。
昔から笑う事が苦手だ。
だから、いつも何も面白くなくてもへらへら綺麗に微笑んだりできる黒川がずっと面白くない。
落ち込みながらも話は進み、簡単な自己紹介の流れになった。
両親が挨拶を終え、私も頭を下げる。
「‥藤乃今宵です」
自分でも驚くほど淡白な声だった。
「柊の叔父の最上光一です。甥も、お嬢さんに会えるのを楽しみにしておりました」
そういってあまり叔父という年齢には見えない最上社長の叔父さんが、彫刻のように綺麗に笑う。
‥‥嘘ばっかり。
そんな事を思うが、元々無表情な私の顔にそんな感情が浮かぶ事は無かった。
「最上社長の秘書をしております、
九条若菜です。よろしくお願いします」
そう言ってペコっと頭を下げたのがさっき廊下でみた女性だ。
緊張しているのか、少し顔が赤い。
やっぱり秘書だったのか。
不意に目が合うと、ますます九条さんの顔が赤くなって、お辞儀をしながら目を伏せられ、少し戸惑った。
‥‥可愛いな。
素直にそう思った。