秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「最上柊です。よろしくお願いします」
最後にそう言って最上さんが頭を下げた。
私もさっきの失礼な態度を取り消すように小さく会釈を返す。
さすが大手芸能プロダクションの社長。
落ち着いていて、
私とあまり歳は変わらないはずなのになんだかそんな感じがしない。
芸能プロダクションの社長‥。
正直、事務所に入ってマネージメントされる側の人間じゃなかったんですかってつっこみたいくらいの容姿をしている。
「まだお若いのに、会社の社長さんだなんて大変でしょう?」
「そうですね、まだ至らない事だらけで、周りに頼りながらなんとか。でも、その分やりがいも大きいです」
「あらぁ、
若いのにしっかりしてらっしゃるわぁ。それに俳優さんみたいにかっこいいし」
「いえ、そんな‥」
「よかったですね、最上社長」
黙り混む私をよそに、会話も弾む。
時々黙り混む私を気遣うように、九条さんが話を振ってくれたりして、いい子だななんて感心しつつもそれに返すくらいにしか会話には参加できなかった。
‥こういう場は苦手だ。
40分くらい時間がたち――
そろそろかな、と思って口を開く。
「すみません、私そろそろ、最上さんと二人だけでお話がしたいです」
淡白な声が緊張して少しだけ震えた。
「えっ‥‥」
両親がそろって目を丸くしてぽかーんとする。
もちろん、当の最上さんも小さく目を見開いていた。
まぁ当たり前だ。あれだけ乗り気じゃないとあからさまだった見合いに、いままでの無愛想の通常運転。
驚かせてしまうのも無理はない。
ただ、一拍おいて二人が心から嬉しそうな表情になったときはさすがに胸が痛んだ。
勘違いさせるような事を言ったのは私だ。