秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

私達の事は気にせずに、大切な人がいらっしゃるなら縁談は断って貰って構いません、ってそう言えたらいいのに。

縁談は親が決めた事。
結婚だって、いずれは親が決めた誰かとするものだと昔からわかってた。
だけど、
こんな形で縁談が進むのは私が嫌だ。

自分達から言い出しておいて断って、だなんて、なんて非常識な人と思われているんだろう。

そう思うのに、思うように話せない。


「秘書さんの事、大切なんですよね?」

「‥‥‥‥!」


最上さんの目の奥が、
かすかに揺れた気がした。

‥‥ストレートに言いすぎた。
少しだけ見張った目をすぐに反らされる。

人の感情には、自分は結構疎い方だと思っていた。

でもこの人は――だいぶ分かりやすい。


「間違ってます?」


冷淡な声でそう尋ねる。

すると、一拍置いて返された。

< 96 / 276 >

この作品をシェア

pagetop