秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「間違って無かったとしても、
私が今日ここに来たのは、その秘書に見合いを勧められたからですよ」
「‥‥‥‥。」
肯定でも否定でもない答え。
最上さんが憂いを帯びたような目で微笑む。
‥確かに、九条さんに最上さんの結婚を惜しむような雰囲気は無かった。
確かに、好きな人に他の女との結婚を進められる程辛いものはないだろう。
でも、別に脈がない訳じゃないかもしれないし、一部始終を盗み見た所、ただの社長と秘書の関係では無いことは確かだ。
「ヤケになってしまったって事ですよね。
すみません、そんな結婚私が嫌です」
「え‥‥」
「親には私から─‥」
頼みますから。
そう言おうとして、止めた。
悪い人間ではないが、いかんせんうちの両親は粘り強いといか何と言うか‥。
今までだって、浮いた話のない私に何度も何度も見合いを進められてきて、今回はあまりの粘りに負けてここにきたのだ。
断るにしても理由がないとまた粘られる。
「申し訳ありません、あと適当に数回会って頂けますか?そしたら親にはお互いにどうしても性格が合わなかったといって説得できますから」
最上さんから張り付けたような笑顔が取れ、一瞬だけ、今にも泣き出しそうな子供のような表情が垣間見えた。
最上さんが申し訳なさと戸惑いで一杯のような顔になる。