秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「そんな顔しないで下さい。そうしたいんです。私だってその‥‥い、いるので」
あ。何言ってるんだ私。
思わず口から滑りでた嘘に自分の中で冷静に突っ込む。
「何がですか?」
「‥‥好きな人です」
柄にもない一言が口をついた。
最上さんが驚くように目を見開く。
とっさについた嘘だった。この方が受け入れてもらえそうだと思った。
そのまま丸め込む。
「だからこんな政略結婚嫌なんです。
受け入れて下さいますか?」
「‥‥はい」
最上さんがやっと承諾してくれた所で、
一息ついた。
──遅い。
「じゃあ連絡先教えて貰えますか」
「は?」
ジャケットのポケットから最上さんが携帯を取り出す。
「適当にあと数回、
会ってくれるんですよね?」
「‥そうでしたね」
あああもう、なに私、自分から言い出したプランの癖に"そうでしたね"って。
何でまともに返せないの‥‥。
心の中でそう頭を抱えながら、なに食わぬ顔で携帯を取り出して連絡先を交換した。