秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
「来週の日曜日にまた会えます?」
「はい」
「‥‥それじゃあ私はこれで」
そう言って鞄を手に持つ。
そのままガタっと椅子から立ち上がると、最上さんも同時に腰を浮かせた。
「送りますよ、車で来てるので」
「えっ‥?」
黒川の迎えを呼ぼうと鞄から携帯を取り出そうとしていた手を止める。
送るって‥。
正直こんな話をした後に最上さんと二人きりは気まずい。
ただでさえ他人と二人きりでいるのは窮屈で苦手なのに。
でも確かに、両親を帰らせてから時間もあまり経ってない。
もし両親が黒川に車で迎えを頼んでいて帰宅中だったら‥。
このタイミングで私も黒川を呼んだら、両親だけでなく黒川にもいろいろと言及されるのも面倒だ。
「‥‥お願いしてもいいですか」
「もちろんです」
そう言って、最上さんはまるで黒川のように、紳士的に微笑んだ。
◇
そのまま店を出て、最上さんに案内されながら車までたどり着く。
やはり社長と言うだけあって、車に詳しくない私でもいい車という事だけはわかる。
慣れた手つきでガタっと助手席のドアを開けられ、緊張しながらも車に乗り込んだ。