Better*honey―苦くて甘い秘密の恋―
「あ、これ。可愛くない!?」
「あぁ~でも私には似合わないんじゃ…」
「あんたの意見なんてどーだっていいんだわ!
買うったら買うの」
「ちょ、」
何なの、もう…。
今日は休日だってのに呼び出しされて、
半ば強引に連れてこられたかと思えば
その言われよう。
本当にフザけたもんだよ。
きっと私じゃなきゃ許さないだろう。
「はい。これ一式今すぐ着て!」
と渡された服一式を渋々受け取り、着替えた。
事の発端は…
『ねぇ、音って
いっつも同じような服しか着てなくない?』
『そかな?でもいつもこんな感じだよ?
ファッションに興味なかったし』
そんな会話。
私がいっつも似たような服しか着てこない事に
何か感じたのか服一式買って頂けたようで…
ありがたいような…、
何だか複雑だ。
だってさ…、
どうみてもこれ、変だよ。
鏡に映る自分を見つめ、
なぜ私はこんなに可愛い服が似合わないんだろうか
とため息が漏れる。
肩だしのお洒落な黒い服に、
透け感溢れる白いロングスカートに
やたら高いミュール。
今まで
ジーパンに緩めのTシャツしか着てなかった私。
そりゃ、こんな可愛いお洒落な服に
憧れがなかったわけではないのだが、
やはり、
「似合うじゃん!!」
えっ…?
私が言おうとしていた事とは
真逆な言葉が放たれ、目がテンになる。
これが??似合ってる??
「私の目に狂いはなかったな」
と高笑いする沙織に引きぎみの私。
「これだったら、いけるよ!」
「何が」
「当たって砕けるのも一つの手!」
「…ごめん。話についていけないんだけど?」
「この鈍感ちゃんが!
高瀬さんとの恋路に決まってるでしょ♪」
♪なんて付けちゃって…
「…ていうか、沙織。
さっき当たって砕ける…とか言ってたよね?」
「言ったよ?」
「砕ける前提なわけ!?」
「いやいや、むしろ当たって、はい、めでたし♪
…って、なるとでも?」
まさかの!?
応援してくれてるもんだと思ってたんですけど!?
「まぁそんな期待よりもまずは
普通に話せるようにならないとねぇ?」
ニヤニヤしながら、
私の背中をポンポンと力強く叩く沙織。
そう。
私、実は…
今まで、自分から話しかけたりしたことないから
緊張しちゃって、上手く話せないんです。
手に変な汗かいちゃって、
頭、こんがらがっちゃうんです。
慣れたらどってことないと思うんだけど…
慣れるまでが大変。