アナザーワールド
扉一枚挟んだ向こうに、母と妹がいる。


いや、母と妹だったもの――と言うべきだろうか。


獣の呻き声にも似た、小さな声も聞こえる。


母と妹だったものの声のようだ。


右手に金属バットを持ち、ドアノブに手を掛けた。


いつの間にか俺の頬には涙が流れていた。


ゆっくりとドアを開けた。


ドアの隙間から、血走った母と妹の目が見えた。
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