アナザーワールド

アナザーワールド

俺は昔から、テレビドラマや映画なんかの「ゾンビ」モノが好きだった。


だからと言って、所謂《いわゆる》「ホラー好き」だった訳じゃない。


むしろそれらは苦手だった。


幽霊や呪いなんかのホラーは正直怖くて見れないし、グロテスクさが売りのホラーも単純に気持ちが悪いという理由で見れなかった。


つまり「ゾンビ」モノだけが好きだった。


もちろん、最初からって訳じゃない。


そもそもホラーは苦手だったから、そういうモノとは距離を置いていたし、ほんの少しも見たいと思った事はなかった。


そんな俺が「ゾンビ」モノだけは見れるようになったのは、面白いとかなり評判の海外のゾンビドラマを、どれほど面白いのかと興味をもって見たのがきっかけだった。


怖かったり気持ち悪かったりしたらすぐに見るのをやめればいい――と思って見始めたそのドラマに、まんまとハマった。


当然、目を覆いたくなるほどのグロテスクなシーンは沢山あったけど、それ以上にストーリーに心を奪われて続きが気になるようになった。


そのうちグロテスクなシーンにも慣れた。


ただ不思議な事に、慣れたのは「ゾンビ」モノのグロテスクなシーンだけで、その他のホラーのグロテスクなシーンは苦手なままだった。


ホラーモノの中で、どうして「ゾンビ」モノだけが平気なのかを自分なりに分析してみた結果、幽霊や呪いのような実体のないものではなく倒せるものだし、殺人鬼が次々とグロテスクな惨劇を犯すモノよりも世界観に現実味がないからだろうと思った。
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