アナザーワールド
結局、非現実的で尚且つ倒せる相手だから――という事だ。


何にせよ、その海外ドラマにハマって以降、色々な「ゾンビ」モノのドラマや映画を見るようになった。


友達に、見たドラマや映画の話をしながら、よく「ゾンビには勝てる」と豪語したものだった。


言った事は冗談だったけど、本気で勝てると思っていた。


生き延びる術《すべ》も、ドラマや映画を見て分かっていたから、そこに出てくる主人公たちのような立場に立てると思っていた。


でもそれは、非現実的な世界に対しての、非現実的な想像に過ぎなかった。


それが非現実的な世界でなくなった時、頭の中に描《えが》いてたものが如何《いか》に現実感から懸け離れていたのかを痛感する。


――そう。今のように。


世界は変わった。


あろう事か、好んで見ていたドラマや映画の中と同じ世界になってしまった。


死者が歩き、死者が生きている人間を襲う。


現実には有り得ないと思っていた事は、現実になった今でも夢なのではないかと思う時もある。


始まりが何だったのか、どんな風だったのか、そんなもの一般人の俺たちに分かるはずもない。


況《ま》してや原因が何なのかなんて知る訳もない。


噂によれば、新種のウィルスの所為《せい》なのだとか。
< 3 / 11 >

この作品をシェア

pagetop