ONE LOVE
右手がタバコを求め、空中を漂う。

しかし、掴んだ箱にはもう1本も入っていなかった。


「チッ……」


小さく舌打ちをすると、渋々重い腰を上げる。

だんだんと暮れかけていく太陽の光を頬に浴びた時は、部屋から出た事を一瞬後悔した。


「…っぶしいー…」

瞳の奥にツンと突き刺さるような光から目を背けると、近所の自販機までテクテクと歩き出す。


自分の影が細く長く写る。
まるで宇宙人みたい。なんて、ガキみたいな事を考えた。


自販機に着くと、傍にある広場のベンチに女が一人、座っていた。

"女の子"と言った方が正しいかもしれない。

そんな人どこにでも居るし、普段なら気にも留めないんだけど、その子は妙に俺の目を引いた。


清楚な雰囲気の彼女は眩しいはずの夕焼けをただぼんやり眺めているようだった。
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