ONE LOVE
そう言って深く吸い込む。

「あの……一体何なんですか?」

彼女は蚊の鳴くような掠れ声で言った。


俺はここに来てやっと自分の置かれた立場に気付く。

友達でもなけりゃ知り合いでもない。
ただ単にこっちが勝手に知ってたってだけで…


何してんだ?俺。


そう自分に問い掛けた。

もちろん答えなんて見つかるわけもなく、ただ沈黙が流れる。


「ゴメン…帰るわ」


きっと彼女の方が変に思ったに違いない。

知らないはずの男に声をかけられ、AV女優に似てると言われ、あげく馴れ馴れしく会話し始めたのだから。


俺、超変人じゃん。


俺は自分のした事に身震いをした。
俺がされたらキモい以外に何を思う?


最悪だよ。
馬鹿だなぁ…俺。


そう思いながら来た道を引き返した。
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