雨上がりに。
2週間後。
冬休み初日。
わたしとさくらは2人でお世話になる旅館に来ていた。
面接は余裕でクリア。
事は坦々と進んだ。
旅館は写真よりもずっと綺麗で、中は暖かい印象のある素敵なところだった。
「それじゃあ2人ともよろしくね」
女将さんも優しそうな人だ。
わたしたちみたいに若い人は大学生ばかりのようだ。
「宿の仕事はご飯の準備、部屋の掃除、布団敷き、あとはスクールの受付かな」
「思ってたよりも仕事少なそうやな」
隣でさくらがこそっと言った。
「ほんまな。力仕事とかやったらどうしようかと思ったわ」
「じゃあ、さくらちゃんには部屋の掃除、まやちゃんにはスクールの受付お願いしていいかな?」
「「分かりました!」」
わたしたちは返事をしながら、それぞれ仕事を教えてくれる大学生の人たちについて行った。
わたしに仕事を教えてくれる人は髭の生えたダンディーな感じの男の人だった。
「川瀬やっけ?俺は田中や!よろしくな!」
「はい!お願いします!」
田中さんは見た目よりも話しやすくて、すぐ仲良くなった。
「スクールの受付は泊まっとる人が申込しに来たら名前とか書いてもらってお金預かって、最後スクールに持ってたらええから!」
「が、がんばります!」
想像以上に簡単な仕事だった。
受付だからスクールの説明とかいろいろしないといけないと思っていたけど、そうでもなかった。
受付時間は2時間くらい。
10分に1人申込に来るくらいの感じで暇なような暇じゃないようななんとも言えない仕事。
人がいないときは田中さんと話していた。
田中さんにはこの宿で会った彼女がいること。
もうすぐ彼女が誕生日であること。
初デートのこと。
とりあえず惚気をひたすら聞いていた。
「お!2時間経ったな!んじゃ持って行ってこい!」
「え!?ちょっ、まっ…!」
誰に渡すのとか聞いていないまま田中さんはわたしを置いてどっかに行ってしまった。
(ほんとに雑やなぁ…)
さっき教えてもらった旅館から少し歩いたところにあるスクールに申込書を持って入った。
すると中には外国人がいっぱいいた。
そしてみんな同じスキーウェアを着ていて何が何だかよく分からなかった。
入口でおろおろしていると、少しケバい感じのメイクをした女の人が話しかけてきた。
「何しとん〜?」
「あっ、えっと、スクールの申込持ってきたんですけど…」
するとその女の人は「あぁ!」みたいな顔をして1人の男の人の方へ走って行った。
「日和さーん!旅館の子来ました」
(日和?変な名前…)
日和という名前の人はわたしの方へ歩いて来た。
そんなに高くない背。
ゆるっとしたカーディガンがよく似合う中性的な顔。
それが日和の第一印象だった。
「ありがとう!旅館の子やんな?見たことないけど新人?」
「あっ、はい!今日からです。川瀬茉耶といいます。お願いします」
「こちらこそ!」
そんな会話をしているとさっきの女の人がこっちに来て日和さんの腕を引っ張った。
「はよ滑り行こや!申込来たんやし」
「もうちょい待って、はるか」
(付き合ってるんかな…?)
日和さんの黒の少し伸びた髪型と、『はるか』と呼ばれる明るい茶髪にケバいメイクの彼女はあんまり釣り合っていないように見える。
まぁ関係ないけど。
「それじゃあ失礼します」
「待って!」
後ろを向いて帰ろうとすると日和さんに引き止められた。
「これあげる」
そう言って渡されたのはチョコレートだった。
お菓子好きなお子さまに見られたのかな?
そんな風に思いながら軽くお礼をしてわたしはスクールを後にした。
日和はわたしを初めて見たとき、何を感じて、どう思っていましたか?
冬休み初日。
わたしとさくらは2人でお世話になる旅館に来ていた。
面接は余裕でクリア。
事は坦々と進んだ。
旅館は写真よりもずっと綺麗で、中は暖かい印象のある素敵なところだった。
「それじゃあ2人ともよろしくね」
女将さんも優しそうな人だ。
わたしたちみたいに若い人は大学生ばかりのようだ。
「宿の仕事はご飯の準備、部屋の掃除、布団敷き、あとはスクールの受付かな」
「思ってたよりも仕事少なそうやな」
隣でさくらがこそっと言った。
「ほんまな。力仕事とかやったらどうしようかと思ったわ」
「じゃあ、さくらちゃんには部屋の掃除、まやちゃんにはスクールの受付お願いしていいかな?」
「「分かりました!」」
わたしたちは返事をしながら、それぞれ仕事を教えてくれる大学生の人たちについて行った。
わたしに仕事を教えてくれる人は髭の生えたダンディーな感じの男の人だった。
「川瀬やっけ?俺は田中や!よろしくな!」
「はい!お願いします!」
田中さんは見た目よりも話しやすくて、すぐ仲良くなった。
「スクールの受付は泊まっとる人が申込しに来たら名前とか書いてもらってお金預かって、最後スクールに持ってたらええから!」
「が、がんばります!」
想像以上に簡単な仕事だった。
受付だからスクールの説明とかいろいろしないといけないと思っていたけど、そうでもなかった。
受付時間は2時間くらい。
10分に1人申込に来るくらいの感じで暇なような暇じゃないようななんとも言えない仕事。
人がいないときは田中さんと話していた。
田中さんにはこの宿で会った彼女がいること。
もうすぐ彼女が誕生日であること。
初デートのこと。
とりあえず惚気をひたすら聞いていた。
「お!2時間経ったな!んじゃ持って行ってこい!」
「え!?ちょっ、まっ…!」
誰に渡すのとか聞いていないまま田中さんはわたしを置いてどっかに行ってしまった。
(ほんとに雑やなぁ…)
さっき教えてもらった旅館から少し歩いたところにあるスクールに申込書を持って入った。
すると中には外国人がいっぱいいた。
そしてみんな同じスキーウェアを着ていて何が何だかよく分からなかった。
入口でおろおろしていると、少しケバい感じのメイクをした女の人が話しかけてきた。
「何しとん〜?」
「あっ、えっと、スクールの申込持ってきたんですけど…」
するとその女の人は「あぁ!」みたいな顔をして1人の男の人の方へ走って行った。
「日和さーん!旅館の子来ました」
(日和?変な名前…)
日和という名前の人はわたしの方へ歩いて来た。
そんなに高くない背。
ゆるっとしたカーディガンがよく似合う中性的な顔。
それが日和の第一印象だった。
「ありがとう!旅館の子やんな?見たことないけど新人?」
「あっ、はい!今日からです。川瀬茉耶といいます。お願いします」
「こちらこそ!」
そんな会話をしているとさっきの女の人がこっちに来て日和さんの腕を引っ張った。
「はよ滑り行こや!申込来たんやし」
「もうちょい待って、はるか」
(付き合ってるんかな…?)
日和さんの黒の少し伸びた髪型と、『はるか』と呼ばれる明るい茶髪にケバいメイクの彼女はあんまり釣り合っていないように見える。
まぁ関係ないけど。
「それじゃあ失礼します」
「待って!」
後ろを向いて帰ろうとすると日和さんに引き止められた。
「これあげる」
そう言って渡されたのはチョコレートだった。
お菓子好きなお子さまに見られたのかな?
そんな風に思いながら軽くお礼をしてわたしはスクールを後にした。
日和はわたしを初めて見たとき、何を感じて、どう思っていましたか?