あなたで溢れる
手を繋いで夜道を歩く。
「…英里奈は兄貴が好きなのかと思ってた…」
「秋ちゃんを?」
「会えるって楽しそうにしてたから」
「お兄ちゃんにも会えるなって思ってた」
「そっかそっか」
修が笑う。
「ね〜。本当に英里奈は俺の気持ちに気付いてなかったの?」
「何回も聞くね、気付いてないよ」
修がシツコイ。
「ただの幼馴染みにしか思ってないんだろうなって…」
「イヤ‼︎ イヤイヤイヤ‼︎」
修が遮る。
「英里奈の幼馴染みの基準がおかしい‼︎」
とか言われても、
「修しか知らないんだからしょうがないじゃない」
少し拗ねたくなる。
「幼馴染みは‼︎ 髪を撫であったりもしないし、おやすみのハグやデコチューもしないし、涙をキスでふきとらないし、散歩で手を繋がない」
「え?だって……修は昔からしてきてたじゃん」
あれ?
だよね?
してきてたよね?
「ソレが普通だと思い込ませたからね〜」
サラリと言われた。